三線教室 ONLINE 東京 by 豊岡マッシー

宮古生。首里育。東京在住。イチャリバーズ 三線 二胡 歌 絵画アーティスト 三線とオンライン教室のブログ YOUTUBE配信毎日やってます

安里屋ユンタ。元歌はどういう歌なのか。カバー曲の数々

安里屋ユンタはもともと竹富島の歌だ。
役人「目差主(みざししゅ)」が安里屋(家の屋号)のクヤマちゃんを
賄い女(現地妻?)に欲しいと言った。
しかしクヤマにはもっと上の役職の「与人親(あたりょうや)」がいいと断られ、
そのあとに「イシケマ」ちゃんにお願いしたら「OKよ」ということで
大事に持ち帰ったとさーという内容です。
なんと最初の安里屋ユンタの主人公は役人の目差主だったのです。
おそらく本当にこういうことがあったんだろうというような歌です。
ユンタというのは男女が交互に歌うような「掛唄」(かけうた)のことです


当時の賄女(まかないおんな)というのは人頭税という過酷な労働から逃れられるわけだし畑も貰えるしセレブ的な憧れのポジションだったのだろうと思います

(しかし役人は任期が終われば首里に戻るので賄女は捨てられていくのです。できた子供も連れて行かれとてもかわいそうです。そいういう別離を歌った「与那国ションカネー」という非常に悲しい歌もあります。子供が成長して島に戻ってきて産みの母親に会うというお芝居もあります。)

これが石垣島八重山民謡となって歌詞が変わります。
安里屋のクヤマちゃんは目差主の申し出を断り、
なぜ断るかと言いますと、島の男と一緒になりたいのです、
それが島のためなのです、
と、クヤマちゃんを色白美人の主人公にした歌になりました。
民謡の安里屋ユンタといえばこちらのバージョンがほとんどです。


それが戦前、1934年に標準語バージョンがレコード化された。
石垣出身の星克(ほしかつ)作詞、宮良長包作曲。
一般的に歌われる「君は野中のイバラの花か〜」のやつですね。
全国的に知られているので初めてヒットした
オキナワソングではないかと思います。
これも同じ「安里屋ユンタ」なので紛らわしい。
こちらは「新・安里屋ユンタ」にすべきでしょう。


最初に録音はたぶんこれだと思います。
1934のコロンビア。
SPレコードとは蓄音機用のレコードです。
試聴できるとこ見つけました。
イントロが長いため試聴が歌が入ったあたりで切れてしまうのが残念。
ピアノとヴァイオリンの演奏なんですねえ。
こういう部分が宮良長包作曲の部分なんでしょうか?
三線は入っていませんね


SP盤復元による 沖縄音楽(うた)の精髄4
okinawasinzui.jpg

沖縄民謡だから方言だと思われてるけど、
歌詞は全部、標準語です。
元歌とは全く関係のない内容になってます。
クヤマちゃんも出てきませんので安里屋も関係なくなっちゃった。
ユンタ(掛唄)の雰囲気も無くなりました。
ただお囃子だけは残った。
やっぱお囃子って言葉の化石みたいに不滅なんだなと思いました


「マタ ハーリぬ ツンダラ カヌシャマよー」
これは「マタ」はもう一回繰り返すときの「マタ」。
「ハーリ」はお囃子。「ツンダラ」はかわいそうとか切ない。
でも可哀想と可愛いは同じっぽいです。
「カヌシャマ」は愛しい人です。

竹富島では西と東で歌い方が違います
「ハーリぬ チンダラ チンダラよー」
「ハーリぬ チンダラ カンシャマよー」


マタ・ハリが死んだら神様よ」という替え歌があったそうなのです。
インドネシア語がどうのという解説があるけど
それってこの替え歌のことじゃないでしょうか?
竹富島八重山の方言とインドネシア語は何の関係もないですし。

さて安里屋ユンタにはいろんなカバーがあります。

自分が一番驚いたのがこれ。
なんと「ブロンディ」の安里屋ユンタ
「ブロンディ」って言ったら「コールミー」とか
「ハートオブグラス」とかのあの「ブロンディー」です。
これがすごくかっこいいアレンジ。
ゆる〜い感じ、浮遊感もあるし。
ボーカル「デボラハリー」が「サーユイユイ」ゆうてますーー。

でもどうしてこの曲を知っているのか?沖縄が好きなのか?
想像するに、おそらく坂本龍一のカバーで知ったのではないだろうか。
曲のテンポや「マタハーリヌ」のメロディが坂本バージョンに似てますね



ということで久々に聞いてみた。坂本龍一の「安里屋ユンタ
1988年の「ビューティ」に収録されてる。
この前のアルバム「ネオジオ」には「耳切坊主」と
「ちんぬくじゅうしい」が収録されているので、
坂本龍一オキナワソングの第二弾といなる。
ややゆったりとしたピースフルな感じだ。
バックコーラスに聞こえるアフリカンボイスはユッスンドゥール。
フラメンコ調のギターもはいってるし、
すごい豪華なワールドミュージックになっている。
そして歌はなんと、ご本人が歌う。
素朴な歌声でございますが。
細野さんも歌ったことだし、オキナワ曲、
一曲は自分で歌おうと思ったのかもしれない。
サイドボーカルは我如古よりこさん。




そして坂本龍一のピアノトリオでも「安里屋ユンタ」をやっていた。
これも驚きだ。チェロとヴァイオリンとピアノのトリオ。
ラストエンペラーやシェルタリングスカイ、戦メリなど
映画音楽をメインにしていて、大変美しく、ドラマチックで
坂本のベストだと言ってもいいくらいのものなのですが、
このユニットのツアーで安里屋ユンタがラインナップされてることが不思議だ。
バイオリンとチェロがメロディを奏でるのかと思いきや、
なんとガシガシとリズムを刻むのみ。
メロディは坂本自身が歌うという驚きのアレンジ。
ご本人もこの歌には思い入れが強いのかもしれない。


https://youtu.be/7eeMbv1PN_k?t=3770
yuntasakamototorio.jpg

そして、この坂本さんのユンタに直接影響受けたっぽい。
香港の「安里屋ユンタ」。作曲に坂本龍一の名前がある。
ドラマ「金牙大狀」の主題曲だそうで、ロマン・タムという方が歌っている。
タイトルがなんと「孔子曰」こうしいわくですか?
孔子の教えが歌詞になっているのだと思われます。
やっぱりというか、中国語(広東語)に安里屋ユンタはぴったりですね。
もうこれが元歌ですって感じ。
サーユイユイがなんだろう?二胡?不思議なサウンドです。
Cメロみたいなオリジナルメロディが凄くマッチしてる。



ユンタを世界に広めてくれた坂本龍一ですが。
その10年前1978にに細野さんがすでにカバーしております。
沖縄カバーは元祖ではないだろうか。
「はらいそ」の「安里屋ユンタ
この当時のトロピカルフュージョン路線のアレンジは今聴いても全然かっこいい。
細野さんボーカルがすごい低音。
一緒に歌っている女性もそれに合わせてすごい低音。
この歌手は誰だろう。こちらも魅力的です。
(※川田朝子さんという方でした〜)

「くゆしゃ から しるさ すだちよー」と若干歌詞が違う。
この歌詞も謎です。
通常は「小(くゆ)さ から白(しる)さ産(す)でぃばし」
訳すると「小さい頃から 白く生まれたよ」になります




安里屋ユンタ、カバー大会。
やはり一番素晴らしいのは、この方「おおたか静流
1993年の「リピートパフォーマンス2」に入っている。
歌はもちろん最高なのだけどリズムアレンジが本当最高。
このアレンジは誰なんでしょうか?
こういう雄大な16ビートがこの曲にほんとぴったり。
スケールがでかい。センス最高の安里屋ユンタです。


https://itunes.apple.com/jp/album/repeat-performance-ii/id360915669?i=360915674&l=en
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